金属3Dプリンター

May 23, 2024

Meltio社の最新金属3Dプリンター「Meltio M600」に搭載のブルーレーザーを深堀り

Meltio社の金属3Dプリンター「Meltio M600」搭載のブルーレーザーは高速造形を可能にします。ブルーレーザーを搭載した「Meltio M600」メリットやデメリットを解説いたします。

近年レーザーワイヤーDED方式を採用する企業が増え、さらに短波長のダイレクトダイオードレーザーの技術革新が進んでいます。

レーザーワイヤーDED方式を用いたMeltio社製品の第2世代である「Meltio M600」は、独自でカスタマイズしたブルーレーザーシステムを使用して、より効率的に金属部品を造形し、より広範囲の材料を製造するためのシステムが構築されています。

この記事では、ブルーレーザーの特徴、メリットやデメリットを解説いたします。ブルーレーザーを搭載した「Meltio M600」もご紹介していきます。

1. ブルーレーザーとは

ブルーレーザーは、別名「青色レーザー」とも呼ばれており、400nmから500nmの波長範囲の光ビームを放出します。従来の赤外線レーザーよりも銅や金などの非鉄金属への吸収率が高いため、近年注目がおかれているレーザーです。

2. ブルーレーザーのメリット

ワイヤーDED方式において、高出力レーザーはワイヤーを溶かして部品を積層させるために使用されます。従来の近赤外レーザーよりも、高出力であるブルーレーザーを使用した方が金属部品の造形の際多くのメリットをもたらします。

一般的に、多くの金属が近赤外レーザーよりもブルーレーザーをより効果的に吸収するため、波長が980nmから450nmに短くなることで、同じレーザー出力でもより高い割合で金属を溶かすことができ、より高速な積層と部品ごとの総消費エネルギー削減を可能にしています。

特にアルミニウムや銅合金などの反射材料において、この効果は顕著に見られる傾向があります。これらの材料は需要が高く、従来の近赤外領域のレーザーでは造形が非常に難しいといわれています。

さらに、レーザーワイヤーDED方式などのエネルギー効率の高い積層造形におけるブルーレーザーの活用は、製造業の環境への影響を軽減できます。

3. ブルーレーザーのデメリット

一方で、デメリットも存在します。ブルーレーザーのコストは同等の近赤外光源の数倍にも及ぶため、依然として積層造形の分野では珍しい存在です。

現在、ほとんどのレーザーワイヤー方式の造形ヘッドが高出力ファイバーレーザーを基に設計されているという点からも、上記のデメリットを考えることができます。ブルーレーザーの高コストの大部分は、kWクラスのブルーレーザーを制作するための難しいアライメントとファイバー結合です。

4. デメリットの改善:新しいシステムの誕生

Meltio社としての主な目標は、レーザーワイヤー積層造形の大規模な産業利用です。単純に異なるレーザー光源を導入し、既存の積層ヘッドにファイバーを結合するかわりに、過去3年にわたり、ブルーレーザー光源を直接積層ヘッドに統合する新しい装置の開発に取り組み、同時により多くの製造工程を内製化することで、性能と柔軟性を向上させ、コストの削減を実現しました。

その結果、レーザーワイヤー積層造形のニーズに完璧に適合するレーザー光源をカスタマイズすることができました。これにより、より少ない光学素子で、さらにブルーレーザー光源で期待される以上の高いウォールプラグ効率が実現されました。


レーザーを積層ヘッドに統合することで、すべての光学部品アセンブリを一つの密閉されたサブアセンブリに集中させることができるため、システムのメンテナンス中に壊れやすい光ファイバーを切断する必要がないというメリットももたらします。

最後に、Meltio社がレーザーシステムを一から構築した最大のメリットは、手動のレーザーワイヤーのアライメント調整が不要になったことです。レーザーの焦点をワイヤーに合わせる作業は、従来は手動で行われていたため、セットアップ間でのばらつきが生じ、追加のオペレーターのトレーニングが必要不可欠でした。

さらに、エネルギー分布を変化させ、ワイヤーのガイド精度を向上させることで、サービス後の再調整が必要なくなりました。また、異なる材料間のわずかなばらつきが許容された、工場にて調整済みの積層ヘッドを提供できるようになりました。

5. まとめ

ワイヤーDED方式を念頭に置いて直接レーザー光源を開発することで、オペレーターの手間とエネルギーの使用量を削減し、リーズナブルな価格を維持するシステムの提供が可能になっています。

Meltio社にとって、レーザーシステムとそれに対応する製造システムの開発は、複雑でありながらも、クリーンルームの設置、製造技術の習得、何千時間もの試験期間など、学びの多い経験でした。同社は、独自でカスタマイズしたブルーレーザーを搭載した「Meltio M600」が、製品の性能と信頼性をより高め、さらに最終造形品の炭素排出量を減らすという目標を達成するために必要不可欠であると考えています。

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6. 製品紹介:Meltio M600

「Meltio M600」は、先行機種の「Meltio M450」と比較し造形面積が約4倍になり、鍛造品相当の強度をもつ、より大きな金属部品を造形できます。また、チャンバー内をアルゴンガスで満たすよう設計されているため、より安定した造形を提供します。さらに、ホットワイヤー対応に加え新たにブルーレーザーが搭載されたことで造形速度が速くなり、また使用できる材料の選択の幅も広がります。加えて、部品1個あたりのエネルギー消費量が大幅に削減されコスト削減を実現します。

先行機種と比較すると作業効率もはるかに上がっています。これまでは、プレートを設置するのに労力をかけていましたが、「Meltio M600」ではスライド式で設置できるため簡単に取り外しが可能です。新しいカメラ機能では、造形の様子が鮮明にわかるためリアルタイムで監視ができます。加えて、ワイヤーカット機能により異なる材料を使用する際に安定した造形を提供するほか、ワイヤーのアライメント調整が不要になるなど「Meltio M600」は金属部品の造形を容易にしました。

対応可能材料

・MIGワイヤーなどの既成材料

・銅合金

・アルミニウム

・ステンレス鋼:SUS 316L

 ・ステンレス鋼:SUS 308L

 ・ステンレス鋼:17-4PH

 ・工具綱:H11

 ・ニッケル合金:インコネル®718

 ・ニッケル合金:インコネル®625

 ・ニッケル合金:インバー

 ・炭素鋼:ER70S

 ・チタン合金:Ti-6AL-4V

機械仕様

・造形エリア:300 x 400 x 580 mm

・本体サイズ:1050 x 1150 x 1950 mm

・本体重量:800~1000 kg(選択するオプションにより変動)

・レーザー:9つのダイレクトダイオードレーザー

・レーザー出力:1000 W

・レーザー波長:450 nm

・入力電源:三相 200 V

・消費電力:ピーク時 4~6 kW (選択するオプションにより変動) 

・インターフェース:USB、イーサネット、ワイヤレス

・ソフトウェア:Meltio Horizon

・冷却:水冷式チラー

Meltio社

Meltio社(スペイン)は2019年に設立され、知名度の高い産業界の顧客や大学などの研究開発機関を対象とした高品質の製品を開発・製造しています。レーザーメタルデポジション方式(DED)の技術を使用して、 高性能・手頃な価格・使いやすい金属3Dプリンターを開発・製造することで、金属における積層造形を次のレベルに引き上げます。現在では、世界中で300台以上のMeltio社製品を販売しています。

▽製品の詳細ページ

・Meltio M600

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本記事では、金属3Dプリンターの基礎知識から、造形方式による特徴の違い、メリットとデメリットまで幅広くご紹介しました。

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