PostPro SFシリーズは、AMT社独自のVapor Smoothing技術により、3Dプリント部品を最終製品レベルの品質へと仕上げる後処理装置です。積層痕を消し、気密性・耐水性・耐久性を向上させ、滑らかで一貫した外観に。複雑な形状にも均一に処理でき、手作業不要で高品質な仕上げを自動化します。
用途に応じて、量産対応の「SF100」、試作・小ロット向けの「SF50」、研究開発用途に最適な卓上型「SFX」の3機種をラインアップしています。全機種で環境に配慮した専用溶剤「PostPro Pure」を使用し、安全性と持続可能性にも配慮しています。
Vapor Smoothing技術により、気密性・耐水性・耐久性などの機械的特性が向上。部品の機能性が高まり、最終製品として使用できる品質が得られます。
3Dプリント部品を滑らかに仕上げ、射出成形品のような高品質な表面を実現します。また、塗装や接着などの二次加工も容易になります。
150種類以上のプラスチック材料に対応し、熱可塑性ポリマーやエラストマーなど幅広い3Dプリント素材に対応。多様な製造ニーズにも柔軟に応えます。
使用される専用薬品「PostPro Pure」は、環境に優しいグリーンケミストリー製品です。安全性が高く、生分解性もあり、環境への影響を最小限に抑えます。
セットアップが簡単で、誰でもすぐに使用を開始できます。直感的なインターフェースとシンプルな操作で、スムーズに後処理を行うことができます。
全機種が自動化されており、ユーザーが特別な設定を行わずに、工程全体を自動で進行させます。これにより、ダウンタイムを最小化し、効率的な生産が可能です。
Vapor Smoothingは、3Dプリント部品の表面を滑らかにし、機械的特性を大幅に向上させる後処理技術です。蒸発した溶剤を使用して部品表面の積層痕を除去し、耐衝撃性、耐水性、引っ張り強度などを強化します。さらに、表面を完全に密閉することで、気密性も高まり、部品の耐久性が大きく改善されます。
動画では、Vapor Smoothingで後処理した部品が、3Dプリントしたままの未加工部品よりも耐久性が向上したことを示しています。
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特定の企業では、製品の耐久性や表面精度、滅菌対応の向上が求められていましたが、従来技術では強度不足や密閉性の確保が難しく、微細加工による表面粗さ(Ra値)の達成にも限界がありました。
こうした課題に対し、Vapor Smoothing技術を用いた結果、以下のような成果が得られています。動画では、実際に部品が耐水性を持っていることを確認できます。
Ra値を最大420%低減し、最小1Raμmまでの仕上げが可能に
破断伸びと引張強度が最大300%向上し、耐久性を改善
密閉構造を維持し、医療・消費財・食品用途に適用可能
PostPro Pureは、PostPro SFシリーズで使用される環境に優しい溶剤です。FDA認可を受け、安全で規制に準拠しています。非ハロゲン化で化学的に安定し、無毒で人体に優しく、不燃性のため火災リスクを低減します。
また、生分解性に優れ、使用後は自然に分解され、環境への負担を最小限に抑えます。さらに、リサイクル可能で、持続可能な運用をサポートします。
PostPro SFシリーズで後処理された部品は、FDA認証を取得しており、医療機器や食品関連の安全基準を満たしています。これにより、米国の薬機法や食品衛生法に準拠した信頼性の高い製品であることが保証されています。
Sinterit、Markforged、HP、Formlabs、3D Systems、Stratasys、Nexa3D、Prodways Machine、Sintratec、Wematter、Fasoon Technologies、EOS、AM Polymers など
PostPro SF50 | PostPro SF100 | PostPro SFX | |
処理エリア | 400 x 300 x 400 mm | 400 x 600 x 400 mm | 190 x 320 x 190 mm |
容量 | 48 L | 96 L | 11.5 L |
本体サイズ | 830 x 1400 x 1830 mm | 830 x 1400 x 1830 mm | 450 x 500 x 845 mm |
本体重量 | 800 kg | 850 kg | 82 kg |
設置面積(※AMT社推奨) | 2350 x 3200 mm | 2350 x 3200 mm | - |
電源 | 230V、16A | 300 - 400V、16A | 230V、16A |
溶剤の種類 | FA5802(Pure)、FA326、FA9202 | ※SF50と同様 | FA5802(Pure) |
処理時間 | 1.5 - 2 時間 | 1.5 - 2 時間 | 2 時間 |
食品
フィルター用ストレーナー
食品や製薬業界では、異物やプラスチック片を視覚的に検出できる青色の検出可能素材の使用が求められています。食品生産ラインで使用されるフィルター用ストレーナーでは、表面粗さ(Ra)の改善と密閉が課題となり、細菌の抑制と清掃性の向上が必要とされています。AMT社のPostProは、3Dプリントされた素材の表面を密閉し、孔を除去することで細菌汚染リスクを大幅に低減します。また、部品の青色強化により異物の検出性が向上します。使用されたBluecare素材は、食品接触認証を受け、EUおよびFDA規制にも準拠しています。
Bluecare素材を使用することで、EUおよびFDAの食品接触規格に準拠し、安全性が確保されました。
青色強化により異物の検出性が向上し、ラインの安全性が強化されました。
表面品質の向上により、細菌の繁殖リスクが低減し、より清潔で安全な生産環境が実現しました。
食品
Marel | グリッパー
食品加工機器の大手メーカーであるMarel社は、40〜50cmのサーモンの側面を掴むための新しいグリッパーの開発を最優先で進めていました。Marel社は、デンマーク技術研究所(DTI)と協力し、試作と強度試験を経て、最終製品を完成させました。このグリッパーは、金属探知機対応のナイロンで3Dプリントされ、食品安全を最優先にデザインされています。食品接触部には継ぎ目がなく、丸みを帯びた形状が特徴です。さらに、AMT社のPostPro処理を施したことにより、滑らかで密閉された表面が形成され、清掃性が向上し、細菌の蓄積を防ぐことができました。
表面が滑らかで密閉され、食品残留物や細菌が隠れる場所が減少し、衛生管理が向上しました。
表面の応力集中が減少し、耐衝撃性と耐摩耗性が改善され、長期間の使用に耐える製品となりました。
表面が光沢感を持ち、視覚的な検査が容易になり、損傷や摩耗の確認がしやすくなりました。
食品
Tetra Pak | アイスクリーム押出機
食品業界向けの生産設備を提供するTetra Pak社は、アイスクリームの色を複数混ぜてさまざまな形状で製造する新しいアイスクリーム押出機の開発に取り組んでいました。従来の押出機は溶接で作られており、コストが高く、衛生面でも問題がありました。これに対し、AMT社のPostProを使用して、3Dプリントされた押出機の後処理を施しました。
PostProの後処理により、表面が滑らかで密閉され、液体吸収が防止され、細菌の繁殖リスクが減少しました。
医療
足首・足部装具(AFO)
足首・足部装具(AFO)は、下肢に障害を持つ人々の移動をサポートする重要な役割を担っています。AFOは日常的に転倒や衝撃を受けるため、その耐久性が非常に重要です。本研究では、HP MJF 580 3Dプリント技術で製造したAFOを対象に、AMT社のPostPro処理を施した場合と未処理の状態での耐衝撃性の違いを比較しました。PostPro処理により、AFOの耐久性と信頼性が向上し、患者の快適な使用期間が延びることで、より良い治療成果が期待できるようになりました。
PostPro処理を施したAFOは、未処理のものに比べて60〜80%強い衝撃に耐えることができました。これにより、転倒時の衝撃にも耐えやすくなり、装具の長期的な使用が可能になりました。
未処理のAFOは衝撃を受けるとひび割れが発生しやすく、ひび割れの長さも大きくなりますが、PostPro処理を施したAFOはひび割れが小さく、損傷が抑えられました。
医療
Proteo | カスタマイズ義肢
義肢メーカーであるProteo社は、患者の個別ニーズに合わせたカスタマイズ可能な義肢の開発に取り組んでいましたが、特に患者の残肢の形状に合った義肢を作ることが大きな課題でした。Proteo社は、HPのMJF 3Dプリント技術とAMT社のPostProを活用し、DuoSocket義肢(個別に調整された義肢)の表面仕上げを改善。この技術により、義肢の柔軟なTPU内層の快適性が向上し、外側のPA12外層の耐久性が増加しました。また、表面処理により、汗による細菌の蓄積を防ぎ、患者の生活の質を向上させることができました。
PostPro処理により、TPU内層がより快適に、PA12外層が耐久性と安定性を増しました。
機械的特性の改善により、義肢の耐用年数が延びました。
表面が密閉され、細菌の蓄積リスクが減少し、清潔で快適に使用できるようになりました。
消費財
Conductr | シャッフルボードゲームの駒
デジタルゲーム分野のトップ企業であるConductr社は、デジタルシャッフルボードゲーム用にカスタマイズ可能な駒の製造を目指していましたが、従来の射出成形や手作業での後処理では納期に間に合わないリスクがありました。特に、カラーのパターンに特別な要求があり、追加工程も必要でした。そこで、Conductr社はPrintCityと提携し、3Dプリント技術とAMTのPostPro SF50を活用。SF50の後処理により、複雑なデザインや個別のカスタマイズ要求にも柔軟に対応し、短期間での製造を実現しました。3Dモデルを受け取ってから1週間以内に、80個の駒を納品しました。
従来の製造方法に比べ、80個の部品を1週間で納品し、納期を大幅に短縮しました。
PostPro処理により、滑らかで耐久性のある仕上がりを実現しました。
PostPro処理のおかげで、カラーやデザインの調整が容易になり、個別の要求にも柔軟に対応できました。
航空宇宙
ColdWork | ポータブル機械用のハンドル
航空機の工具を製造しているColdWork社は、高精度の穴あけ作業を行うポータブル機械用のハンドルの耐久性向上に取り組んでいました。これまでの金属製ハンドルは空気圧を通すため、熱が手に伝わりやすく、また落下による破損が頻繁に発生していました。交換費用とダウンタイムが大きな問題となっていたため、ColdWork社はGoProto社と共同で新しいハンドルを設計し、AMT社のPostPro処理を施しました。その結果、ガラス繊維強化ナイロン素材とPostPro処理の組み合わせにより衝撃強度が向上し、頻繁な交換が不要となり、コスト削減と作業の中断時間の短縮が実現しました。
ナイロン素材により、空気の流れによる熱伝達が抑制され、手に伝わる不快な温度問題を解決しました。
PostPro処理で表面が滑らかになり、清掃が容易になり、部品の維持管理コストが削減されました。
強度を向上させながら精度を保ち、航空機の高精度要求に対応可能で、部品の重量は増加しませんでした。
アパレル
HILOS | 3Dプリント靴製造における環境評価
HILOS社は、従来の靴製造方法における過剰生産や材料浪費の問題に対応するため、3Dプリント技術を活用し、オンデマンド生産が可能な靴の開発に取り組んでいます。従来の製造方法では大量生産と在庫の問題が常につきまとい、CO₂排出や水の消費が多くなっていました。これに対し、HILOS社はBASF Forward AMやAMTと協力し、3Dプリント技術とPostPro技術を活用して、持続可能な製造プロセスを実現しました。
PostPro処理により、靴の耐久性が向上し、使用寿命が延び、頻繁な交換を防止できました。
見た目の品質と使用感が改善されました。また表面が滑らかになることで摩擦が減少し、靴の履き心地も向上しました。
自動車
Leeds大学 | 吸気マニホールド
Leeds大学のFormula Studentチームは、エンジン性能の向上を目指し、GoPrint3Dと連携して吸気マニホールドを製造しました。吸気マニホールドはエンジン効率に直接影響を与える重要な部品で、その形状がエンジン性能に大きく関わります。従来の製造方法では複雑な形状の製造に制約がありましたが、Markforged X7とOnyx素材を活用した3Dプリント技術により、より自由で効果的な設計が可能となりました。その後、製造された吸気マニホールドにはPostPro処理が施され、気密性と表面品質の向上が達成されました。
PostProによる表面処理と気密性の強化により、プレンム内のエアフローが改善され、エンジン出力が最適化されました。この結果、従来の設計に比べて高い性能が実現しました。
PostPro処理によって部品の耐久性が向上し、効率的なエアフローを提供できるようになりました。この改善により、エンジン性能が向上し、製造過程でも柔軟性が増しました。
製造業
AGCO | 組立補助部品
AGCOは、農業機器の製造を行うグローバル企業で、特にFENDTトラクターやROGATOR、TERRAGATORなどの高性能な機器を製造しています。ROGATORスプレイヤーの次世代モデルでは、組み立て工程で重要な役割を果たす部品として、3Dプリントされた組立補助部品を使用しています。この部品は、AMT社のPostProによって仕上げられ、組み立て作業の効率を大幅に改善しました。
組立補助部品は、PostPro処理され、部品の位置合わせとインストールが簡素化され、組立時間は数分に短縮されました。年間3,600時間の労働時間削減が実現しました。
表面が滑らかになり、摩擦が減少しました。また、エッジが強化され、高圧下でも安定した性能を発揮しました。
Before & After
3Dプリンターやその他機器をスムーズに使用開始するために必要な技術や知識が身に付く、専門スタッフによるトレーニングをご用意しています。導入したいけれど、自分たちだけでは運用できないかもしれない」「初めての3Dプリンターで、扱える人材がいない」「3Dプリンター用のソフトウェアの使い方が分からない」などの不安を解消!
新時代のものづくりに触れる良い機会でした。
今後も3Dプリンターには関心をおきながら、当社の新製品や要素技術の強化につなげていきたい。