樹脂3Dプリンター

October 29, 2025

歯科向け3Dプリンター導入ガイド:アライナー・義歯模型の量産を実現する「LC Magna」とDental Model樹脂

歯科分野の3Dプリンター活用事例。英国Photocentric社「LC Magna」と「Dental Model」樹脂が、アライナーや義歯床模型の製作をどう変えるのか?高精度・量産・コスト削減を実現するデジタルデンティストリーの最前線を紹介。

1. デジタルデンティストリー時代の到来

歯科業界ではいま、「デジタルデンティストリー(Digital Dentistry)」への転換が急速に進んでいます。
口腔内スキャナーでの印象採得からCAD設計、3Dプリンターによる模型造形まで、これまで手作業で行っていた工程がすべてデジタル化されつつあります。

この流れを加速させているのが、高精度3Dプリンターと専用樹脂の進化です。
中でも注目を集めているのが、英国Photocentric社が開発した 「Liquid Crystal Magna(LC Magna)」 と、歯科用途に特化した樹脂 「Dental Model」シリーズ の組み合わせです。
このセットが、従来の石膏模型に代わる“新しい歯科技工インフラ”として注目されています。

2. 歯科用3Dプリンターの主な用途

3Dプリンターは単なる試作品製造機ではなく、歯科分野では実用的な治療・製造工程で活用されています。

用途 活用内容 主な利点
アライナーモデル 矯正用マウスピース成形のための歯列模型 寸法精度±100µm以内、滑らかな表面仕上げ
義歯床模型
対合歯モデル
デンチャー製作時のベース形成
咬合確認や噛み合わせ調整用
高硬度・耐熱性による安定成形
再現性
高精度スキャン
スタディモデル 診療説明や教育用の歯列模型 石膏レス・保存性抜群

3. 「Liquid Crystal Magna」とは

大型・高精度・高生産性を両立した光造形方式3Dプリンター

Liquid Crystal Magna

「Liquid Crystal Magna(LC Magna)」は、英国Photocentric社が開発した産業用大型LCD方式3Dプリンターです。
独自の「Daylight Polymer Printing」技術を採用し、広い造形エリアと高精度な再現性を両立。歯科模型や矯正用モデルなど、複数の部品を一度に大量出力するのに最適な設計となっています。

LC Magnaの主な特長

  • 超大型ビルドボリューム:510 × 280 × 350 mm
     → 一度に約48個のアライナーモデルを造形可能
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  • 高解像度造形(XY解像度137µm)
     → 歯列や歯根形状の微細な再現に対応

  • 産業向け剛性構造と高出力光源
     → 長時間稼働・高粘度樹脂にも安定対応

  • 高い生産性と低ランニングコスト
     → 矯正・補綴など大量造形におけるコストパフォーマンスが高い

このように、LC Magnaは歯科模型量産に最適化された産業クラスの装置として、多くの歯科技工所や研究機関で採用されています。

4. 「Dental Model」:LC Magnaのために生まれた歯科専用樹脂

Dental Model

「Dental Model」シリーズは、Liquid Crystal Magna専用に開発された歯科用高性能樹脂です。
歯科医師・技工士と共同開発され、歯列模型・義歯床・対合歯モデルといった歯科用途に最適化されています。

◎ Dental Model Beige の特徴

  • 精度:90%以上の造形が±100µm以内

  • 高硬度・高剛性(Shore D 84) により歪み・変形を防止

  • 滑らかな表面仕上げと自然なベージュカラーで石膏模型の質感を再現

  • 高い寸法安定性と短い後処理時間(洗浄15分・硬化60分)

  • 用途:対合歯模型、義歯床モデル、研究・教育用模型

◎ Dental Model White の特徴

  • さらに高精度(80%以上が±100µm以内)・収縮率0.5%以下

  • 高硬度(Shore D 90)・高強度(曲げ強度95MPa)

  • **耐熱温度95℃**で真空成形(サーモフォーミング)にも対応

  • 用途:アライナー製作用模型、デンチャーベース製作

どちらもISO 10993-5に基づく細胞毒性試験に合格しており、生体安全性の高い材料です。

5. 歯科分野での活用事例:アライナー製造を中心に

① デジタル矯正モデルの量産

歯科医院で口腔内をスキャン → CADで段階的な歯列移動を設計 →
各段階の歯列データをLC Magnaで造形 → 真空成形機でアライナーを成形。

この流れにより、従来1〜2週間かかっていた工程が、わずか1〜2日で完結します。
LC Magnaは1回の造形で最大48モデルを同時に出力できるため、矯正治療の多症例対応が容易になります。

② 義歯・補綴模型のデジタル化

Dental Model樹脂は剛性が高く、研磨や切削にも耐えるため、義歯床模型や補綴物検証用の耐久模型としても使用可能です。
従来の石膏模型に比べて寸法安定性・再現性・保存性に優れています。

③ 教育・研究用途

ベージュ樹脂は視認性が高く、教育機関での歯列解剖・治療計画モデルとして活用されています。
また、研究施設では材料挙動や噛み合わせ解析のためのモデルとしても利用されています。

6. 従来手法との比較:3Dプリントがもたらす変革

項目 従来(石膏模型) LC Magna x Dental Model導入後
精度 手作業依存・誤差大 100µm±以内の高精度
スピード 乾燥・研磨で1~2日 数時間で完了
コスト 材料ロス・在庫管理が必要 データ再利用で省コスト
保存 劣化・破損リスクあり デジタルデータで永久保存
作業環境 粉塵・水分処理が必要 クリーン・ドライな環境
量産対応 手作業では非効率 48モデル同時造形が可能

これにより、技工士1名あたりの生産効率が約2倍になったという報告もあります。
歯科業務のデジタル化により、リードタイム短縮・再現性向上・人手不足解消が同時に実現できます。

7. 歯科業界でLC Magnaが選ばれる理由

―精度と量産性の両立―

歯科業界における3Dプリンター選定では、「高精度」と「高スループット」の両立が最大の課題でした。
Liquid Crystal Magnaはその両方を満たす希少な機種です。

  • 大型造形でも均一な光照射により、歯列全体での精度を維持

  • 短時間での一括造形が可能(アライナーモデル48個同時)

  • 高耐久構造で連続造形に対応(実稼働率が高い)

  • 豊富な歯科用材料群(Dental Model、Castable、Gingivaなど)

導入後は、歯科技工所や大学研究室などで「量産+精密造形」の両立が報告されています。
また、LC Magnaは3DPCによる日本国内サポート・保守体制が整っており、医療分野でも安心して運用できます。

8. 今後の展望:AI設計と自動化による次世代デンタル製造

今後はAIによる自動設計や、CAD/CAMと連携したフルデジタル製造ラインが主流になると考えられます。
3Dプリンターはその中心的役割を担い、

  • AI補正による最適な歯列形状出力

  • 遠隔データ共有による地域連携診療

  • デジタル保管による治療履歴再現


など、歯科の未来を支える基盤技術となっていくでしょう。

LC MagnaとDental Modelの組み合わせは、その未来に向けた現実的な第一歩です。

9. 導入をご検討の方へ

3Dプリンターの活用を検討中の方は、お気軽にご相談ください。
3Dプリンターは、医療における分野で注目されている技術です。

医療向け用途の3Dプリントは、目的に合った造形方式や機種・材料の選定、適切な設計が大切なポイントとなります。
弊社は各種造形方式の樹脂・金属3Dプリンターの販売や受託造形サービスを行っています。
3Dプリントのことは、エンジニアリング力に強みを持つ3Dプリンター専門会社の弊社にお任せください。

歯科をはじめとした医療分野で3Dプリンターの活用を検討中の方は、ぜひ弊社までご相談ください。

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横浜市鶴見区の本社工場では工場見学を随時承っております。
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※本記事で紹介しているDental Model樹脂の特性データは、Photocentric社の技術資料(Technical Datasheet)に基づいています。

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