樹脂3Dプリンター

February 12, 2025

溶融粒状製造(FGF)とは?特徴やメリット・デメリット、FFF方式やFDM方式との違いを解説

3Dプリントの代表的な造形方式の1つ「溶融粒状製造(FGF)」は、ペレット素材を直接用いて大幅なコスト削減と高速造形を実現する3Dプリント技術です。 本記事ではFGF技術の基本知識やメリット・デメリットを詳しく解説します。

3Dプリンティング技術は、設計・開発から量産まで幅広く活用されるようになっています。
中でも注目されているのが、粒状材料を直接使用する**「溶融粒状製造(FGF:Fused Granulate Fabrication)」です。

FGFは従来方式に比べて大幅なコスト削減と高速造形を実現できる革新的技術ですが、その一方で造形品質や設定ノウハウに高度なエンジニアリングが必要です。
本記事では、FGFの基礎から他の造形方式との比較、実務上の課題まで3Dプリントの専門会社である株式会社MadeHereのエンジニアリングチームが解説します。

1.溶融粒状製造(FGF)とは

FGFは、1990年代に開発された3Dプリンティング技術の一種で、ペレット状の樹脂素材を直接溶融して造形する方式です。
一般的なFDM(Fused Deposition Modeling)やFFF(Fused Filament Fabrication)がフィラメント状の材料を使用するのに対し、FGFは粒状の材料をスクリューで押し出す構造を採用しています。

この方式により、材料コストの大幅な削減・高速造形・大規模部品の一体出力など、従来技術では難しかった領域での活用が可能となりました。

2.フィラメント溶解製法 (FFF) や熱溶解積層法 (FDM) との違い

FGFは、一般的なFDM(Fused Deposition Modeling)やFFF(Fused Filament Fabrication)技術とは異なり、フィラメント状の材料ではなく粒状の原料を使用します。FDMやFFFがワイヤー状のフィラメントを溶かして積層する「フィラメント方式」であるのに対し、FGFは粒状材料を直接溶融して押し出す「ペレット方式」を採用している点で異なるのです。また、FGFはより幅広い材料に対応でき、大型の造形や高速印刷も実現できます。ただし、FDMやFFFと比べると、より複雑な印刷工程と材料ごとのカスタム設定が必要です。

比較項目 FDM/FFF方式 FGF方式(溶融粒状製造)
材料形態 フィラメント(ワイヤー状)を溶かして積層 ペレット(粒状樹脂)を直接溶融・押し出し
材料コスト フィラメント加工費がかかるため高め 市販ペレットをそのまま使用でき低コスト
造形速度 中速。一般的な試作や小型造形に適する 高速。大量出力や大型造形に適する
対応サイズ 中型サイズまで対応 大型部品や構造物まで対応可能
設定難易度 比較的扱いやすく、初期導入向き 材料特性に応じた条件最適化が必要(高度な技術を要する)
主な用途 試作・教育・小ロット製造 生産部品・建築部材・自動車・大型モデルなど

3.溶融粒状製造(FGF)のメリット

FGF技術の主なメリットについて、以下で詳しく説明します。

幅広い樹脂材料に対応

ABS、PETG、PPS、PEIなどの汎用樹脂から、ガラス繊維・炭素繊維入りの高機能複合材まで対応可能。柔軟性、耐熱性、耐薬品性など、用途に合わせた最適素材選択ができます。

<代表的な素材例>
ABS(アクリロニトリル・ブタエン・スチレン)
ASA(アクリロニトリル・スチレン・アクリレート)
ETG(ポリエチレンテレフタレートグリコール)
PPS(ポリフェニレンサルファイド)
PPSU(ポリフェニルスルホン)
PEI(ポリエーテルイミド)

これらの材料にガラス繊維や炭素繊維を添加することで、さらに高性能な複合材料を作ることが可能です。幅広い材料に対応できるため、彫刻や建築、自動車やヨットモデルなど、さまざまな分野でも応用されています。従来の方法では扱いにくかった硬質や軟質の材料も使用できる点で、今後も応用範囲がさらに拡大していくでしょう。

材料コストを大幅に削減

ペレットを直接使用できるため、フィラメント加工コストを省略。大量生産や大型部品製造で特に高い経済性を発揮します。

高速・大型造形に強い

FGF技術は、従来のFDMやFFF方式と比較して、より高速な造形が可能です。粒状材料を直接溶融して押し出すことで造形するため、材料の供給速度を上げやすく、大量の材料を短時間で積層できます。特に、建築用部材や自動車部品など大型の造形物や量産品の製作においては、製造時間の大幅短縮につながるでしょう。

大型の造形に適している

FGF技術は、大型オブジェクトの印刷に適しています。従来のフィラメント方式では困難だった大きなサイズの造形物も、FGFでは実現可能です。例えば、FDF技術を採用した3Dプリンター「WASP」は、建築用部材や大型彫刻、自動車部品などの製造にも対応しています。

大量生産に向いている

FGF技術は、その高速造形能力と低コストな点から、大量生産に非常に向いています。従来の3Dプリンティング技術と比較して、短時間で多くの製品を製造できるため、生産効率が大幅に向上する点も魅力です。また、材料の補充が容易で連続的な生産が可能なので、製造ラインでの活用にも適しています。他にも、FGF技術はさまざま材料に対応できるため、特定のニーズに応じた製品開発が可能です。消耗品や部品だけでなく、迅速なプロトタイプの製造にも対応しています。

環境負荷の低減

FGF技術を採用した3Dプリンターでは、リサイクル材料を使用することもできるため、環境面で利点があります。また、粒状材料を直接使用する分、フィラメント製造過程で発生する廃棄物なども削減可能です。必要な量だけ材料を使用できるため、無駄な材料の消費を抑えることもできます。例えば、WASP社の「WASP 3Dプリンター」は、環境に優しい素材を用いて大型オブジェクトを製造でき、SDGs・サーキュラーエコノミーに貢献する技術として注目されています。

4.溶融粒状製造(FGF)のデメリット

以下では、FGF技術の課題とされる主なデメリットを説明します。

造形物の仕上がりが粗い

FGF技術では、FDMやFFF方式と比較して造形物の表面仕上がりが粗くなる傾向があります。これは、粒状材料を直接溶融して押し出す過程で、大きな塊が形成されやすいためです。高精度な仕上がりや滑らかな表面が要求される用途では、追加の後処理が必要になり、手間やコストが増加する可能性があります。また、後処理には専門的な技術や設備が求められることもあるため、導入時には十分な計画とリソースの確保が重要です。
弊社の受託造形サービスでは材料の粘度特性と押出パラメータを解析し、最適な設定を導き出すノウハウを保有。精密な表面仕上げと構造強度を両立させた造形を実現しています。

造形の設定に高度な技術が必要

FGF技術ではさまざまな材料を使用できる反面、複雑な印刷工程とそれぞれの材料に応じたカスタム設定が必要です。各材料の特性に基づいて、温度や押出速度、冷却速度などを適切に調整する必要があり、高度な技術・知識と経験が求められます。そのため、FDMやFFF方式と比較して、操作や最適化により多くの時間と労力がかかることがあります。
弊社受託造形サービスでは多様な材料とプリンター実機を用いた造形実験データを蓄積しており、導入時のパラメータ設定から運用支援までトータルサポートしています。

溶融粒状製造に対応している3Dプリンターが少ない

FGF技術は比較的新しい技術であるため、対応する3Dプリンターの選択肢が限られています。多くの3Dプリンターはフィラメント方式を採用しているうえ、FGF対応のプリンターは専門性が高く、価格も高めになる傾向があります。FGF技術を導入する際には、適切な機器の選定と投資が必要です。


弊社は溶融粒状製造(FGF)をはじめとした各種造形方式の受託造形サービスを行っています。
3Dプリントのことは、エンジニアリング力に強みを持つ3Dプリンター専門会社の弊社にお任せください。

お問い合わせはこちら

5.溶融粒状製造(FGF)対応のおすすめ3Dプリンター

WASP

wasp

ペレットから直接部品の製造が可能で、廃プラスチックや海洋ごみなどから新しいものを造形した実績がある、環境に優しい3Dプリンターです。ペレットを使用するため低コストで造形が可能となり、さらに使用できる材料も多いため、製造業や研究、材料開発をはじめ、アート、自動車、家具など幅広い分野で活用でき、またリサイクルやSDGsの取り組みに最適です。

WASP の製品詳細はこちら

Caracol Heron AM

Heron AMは、イタリアに拠点をおくCaracol社が提供するロボットアーム式の大型樹脂3Dプリンターです。
6軸以上の柔軟な方向に動くアームによって、複雑形状の大型部品を効率的に製造できます。材料供給やプリントベッドの交換が自動化されており、効率的な生産が可能な点も魅力です。また、ポリプロピレンなどの一般的な樹脂素材はもちろん、複合材料やリサイクル素材など、幅広い素材に対応しているのも魅力。大型の家具やヨットの製造など、さまざまな用途で活用されています。

Caracol Heron AMの製品詳細はこちら

6.まとめ

溶融粒状製造(FGF)技術は、大型造形や高速生産、材料の多様性など、多くの利点を持つ製造方法です。しかし、FGF技術の可能性を最大限に引き出すためには、専門知識を持つ適切な業者の選択が重要です。適切なパートナーを見つけることで、利点を最大限に活用し、革新的な製品開発や効率的な生産プロセスを実現できるでしょう。

導入をご検討の方へ

溶融粒状製造(FGF)の3Dプリンターの活用を検討中の方は、お気軽にご相談ください。
FGFは、大量生産・高速造形・低コスト・環境対応といった多くの利点を持つ一方で、設定ノウハウと技術検証力が成功の鍵となる方式です。
弊社は溶融粒状製造(FGF)をはじめとした各種樹脂・金属3Dプリンターの販売や受託造形サービスを行っています。
3Dプリントのことは、エンジニアリング力に強みを持つ3Dプリンター専門会社の弊社にお任せください。

お問い合わせはこちら

横浜市鶴見区の本社工場では工場見学を随時承っております。
・‍実機を見てみたい
・造形サンプルを見てみたい
・最適な3Dプリンターを比較したい
・3Dプリンターについて詳しい説明を聞きたい
という方におすすめです

工場見学の詳細はこちら

関連ブログ

お問い合わせ

0120-987-742

月曜-金曜 | 9時-18時

お問い合わせフォーム  

今すぐ相談